親の認知症予防

親の認知症予防<五感を衰えさせない>嗅覚

50代を過ぎると、親もそこそこ高齢で、介護もそんな遠い話ではなくなっていくというもの。
「親に介護が必要になったら、仕事が続けられるか自信無い」
「親が認知症になったらどうしよう」

心配が頭をよぎることはあっても、今は特に何もしていない。まだ親元気だし。
それでズルズルと何年も経ってしまうと、その心配ごとは早まってもおかしくありません。

政府が発表している2025年問題はもう来年。団塊世代と呼ばれる人口の最も多い世代が、75歳以上の後期高齢者になり、日本の高齢者比率を更に押し上げ、介護士不足が深刻になります。

それは介護保険料を払っていても、今と同じレベルのサービスが期待できないどころか、受けたいサービスの料金は上がり、受けられるサービスの範囲は限定され、サービスの質が落ちるという負の連鎖の始まりです。

この記事は、あなたの親の介護サービスを受ける時期を少しでも遅らせることを目的に、認知症専門デイサービス介護職員であり、認知症サポーターの私が、親に実践している『すぐできる簡単な予防策』を紹介しています。

この記事を読むことで、「あ、こんな簡単なことが認知症の予防になるんだ」「これならすぐできる!」と、あなたの中の何も動けていなかった0(ゼロ)から1をつくっていくことができます。親の認知症予防をし、介護時期を遅らせることができると、親は少しでも長く元気にゆるやかに年老いていき、あなたもまた、先の介護を少しでも遅らせ、自分の時間を、自分の人生を平穏に過ごすことができます。そんな未来をつくります。

高齢になると、身体の不自由さに加えて、五感の機能は落ちていきます。この五感の機能が落ちると、脳への刺激が少なくなり、認知症の進行につながることが考えられます。

まずは『嗅覚を鈍化させない!』

この記事の結論から言うと、親に『匂い』を感じる生活を送ってもらう内容になっています。匂いは、リラックスやリフレッシュの効果だけでは無く、想像力を働かせる効果も期待できます。これまで、匂いを感じていても、無関心だったところから、意識していくことで、脳は活性化していき、認知症予防につながるということです。

ポイント1

親が好きな匂いを選ぶ

あくまで目的は親の嗅覚を鈍化させないことなので、自分の好みで選ばないことです。「あ~いい匂い!」と思ってもらえなければ、意識することができません。それどころか、もし「せっかくくれたけど、この匂いは好きじゃない」となればストレスになり逆効果です。「親が好きな匂いなんてわからない」という人は、いったん万人ウケする匂いを選んで様子をみましょう。

ポイント2

高齢者でも危なくないタイプを選ぶ

今は、アロマ、お香、多種多様な『匂い』が市販されています。
マッチで火をつけたり、コンセントをさすタイプは、高齢の親には不向きです。もしこのタイプを選びたい時は、あなたや家族が管理する必要があります。

ポイント3

置き場所は1~3か所で良い

すべてに置く必要はありません。玄関・寝室・洗面所・トイレなどの中で、匂いの変化を感じやすい所に置くのが良いです。匂い慣れしないところです。

あくまで、無臭と匂いの変化をつくり、匂いを感じられる環境をつくることです。

最も家では、他に大切な匂いが存在します。台所や食卓での『ご飯やおかずの匂い』です。こうした料理の匂いは、「今日のご飯は〇〇?」といった想像力がかきたてられます。ぜひ、家族団らんの会話の中に、匂いの話題も入れていきましょう。

私が親に選んだものは、香りの液が入ったビンに、細い木のスティックを挿しておくタイプです。液が木のスティックに染み込んで匂いを放つのですが、スティックの本数で、匂いの強さが調整でき、何より挿しておくだけなので、手間も危険もほぼありません。親とは離れて暮らしているので、親自身ができそうに無いこと、危険性が感じられたものを除外したところ、このタイプに落ち着きました。玄関置きです。

ひとつ、このタイプで困ったことは、余った木のスティックは回収しておかないと勝手に液に追加で挿して匂いが強くなっていることです。また、液が少なくなってしまうと、勝手に水を足してしまうということが最初のころは続きましたが、3回目くらいで覚えてくれて水を足されることはなくなりました。

始めは、この玄関に置いた匂いに反応するか若干疑わしい感じだったのですが、私が何も言わずとも、親の感想は「いい匂いやなぁ」と置く時に言ってくれ、その後も「近所の人が来た時に、なんやえぇ匂いするなぁって言われるねん」と嬉しそうに話していたので、効果的に作用していると感じています。

嗅覚は、匂いに無関心な生活だと、自分で落ちていくことに気づきにくいです。だからこそ、あなたが親にできることは、日常生活に意図的に匂いを取り込み、意識して匂いを感じてもらうこと、料理などから何の匂いかを想像したりすることです。外出時に出会う木々や植物の匂いも同じです。小さな嗅覚の訓練の積み重ねは、脳に刺激を与え、認知症予防につながります。介護生活を少しでも遅らせることで、できることは即実行です。