認知症かいごブログ

デイサービスを拒否する高齢者

私の勤めるデイサービスは認知症専門デイサービス。

朝に迎えに行き、お風呂やお昼ご飯、アクティビティなど行い、おやつ食べて夕方に帰って来る日帰りのサービスです。

ボケてなど無い!!

認知症デイサービスに来ると、周りはみんな認知症で、症状の出かたも様々なため、面食らう人がいます。なぜ、自分がこのような環境に今置かれているのか混乱したり。

私も初めての介護職で、初めて認知症の人と接した時は、とても驚くことばかりで、不安がいっぱいでした。それは、振り返ると、無知から来るものが大きかったと思います。

認知症という病気のこともそう、高齢者が皆、常識人では無いこと、介助のこと、受け入れてくれる人や場所があり、様々なことを肌で感じながら現在があります。

誰でも、認知症でなくても、新しい場所へ一人放り込まれると不安になり、一刻も早く安心できる我が家に帰りたいという気持ちでいっぱいになります。

知らない人ばかり、しかも何だかボケたような人ばかり。自分も認知症であることを理解できない、受け入れられない、切ないことです。

誰もが差別する認知症「あそこはボケた人が行く所」

健康促進や認知症予防の高齢者デイに通っている人が「あそこ(認知症デイ)はボケた人が行く所」と言ったことがあります。

多くの高齢者が線引きしていると感じます。それは認知症であってもです。誰もが、自分は認知症ではないことが前提で口にしています。

そして、一般高齢者のデイサービス(健康促進や認知症予防)のことを「普通の人が行く所」と言います。

受け入れられない気持ち

状況が判る人は、なぜボケた人ばかりの場所に自分が行く必要があるのか、行くとしたら「普通の人」が行くデイサービスだという思いがあります。

それでも、家族に放り込まれ、最初は仕方なくでも過ごす中、徐々に慣れて楽しめるようになったり、認知症が進行して、反発が無くなっていったりしています。

抵抗がある人が新しい環境に馴染むまでは、それなりに日にちがかかります。デイサービスに居る時間を気持ちよく過ごしてもらえるように職員は工夫の日々です。

家が一番!家から出たくない

そもそも家から出たくないインドア系の人がいます。人見知りであったり、面倒くさかったり。そのような人は、なかなか一筋縄ではいきません。根気強いアプローチが必要になります。家に迎えに行き、結局ダメだとしても、関係性を築いていくしかありません。

人によっては何ヶ月もかかる時もありますが、家族が望んでいる以上は根気強く誘いに行きます。門前払いから、雑談になり、気の知れたやり取りが交わせるようになり、そんな積み重ねが、そのうちに一度なら行ってあげてもという具合に変化していくのです。

ここはどこだ!何でここにいるんだ!家に帰る!

慣れるまでデイサービスに来て混乱する人は一定数います。

自分の意思と無関係に来た人は、当然と言えば当然なのですが、「もう帰る!」「帰してくれ!」と帰宅願望を訴える人が多いです。特に男性が多いように見受けられます。

男性は自由でありたい人や、自分の世話をしてくれる奥さんがそばに居ないと落ち着きません。また女性は、家に残した子供や夫、家事のことが気になったり、自分だけが外出していることで落ち着きません。

「こんな所に何しに来たんだ!」
「用事があるから帰らないといけない」
「歩いて帰るからもういい!」

言葉は尽きません。職員としても心苦しくなります。

そのような時は、人によって声かけする内容は違い、その人の背景に寄り添います。

デイサービスではどんな対応をしている?

その人にヒットする言葉の見当を付けながら、声かけして行きます。何を言ってもダメな時ももちろんあります。敢えて声をかけずにそっとしておく方が良い場合もあります。

中には暴れたり大声出したりする人もいるため、他の利用者を守りながら、複数の職員で対応していきます。

声かけで帰宅願望が少し落ち着いても、すぐにまた忘れて元に戻り、また声かけ、トライ&エラーの繰り返しです。

落ち着いたら、今度は楽しめる会話で繋いでいきます。

何に興味があって、どんな話題がいいかは職員一人一人が試しては共有していきます。その人のことを知ることは、関係性をスムーズにして、過ごしやすい環境を作ることができます。

週に1回や2回の利用では、慣れるまでに時間がかかりますが、その人なりの居場所の1つになっていくと、帰宅願望は自然と消えていきます。

 

気持ちに寄り添うことでしか解決できない

認知症になると、わからないことが多くなり、周りとこれまで通りのコミュニケーションが次第に取れなくなってしまいます。意思疎通が図れないことで、苛立ちや不安を抱えてしまいます。

 

デイサービスに来ることで得られること

デイサービスでは、自分は知らなくても自分を知ってくれて声をかけてくれる人がいます。一緒の空間にたとえ自分が普通じゃないと感じる人であっても、人と一緒にご飯を食べたり、体操をしたり、テレビを見たり、一人でできることにチャレンジしたりする場があります。

自分が差別的な目を向けている認知症の人に、職員は皆、自然に声をかけ、手助けしています。差別の線引きを無くすことはできなくても、いろいろな人の存在を容認していくきっかけになっていきます。

諦めないで

デイサービスに行かせたいけど、行ってくれないというご家族や、体験利用に行ったが合わなかったという人は、時期を見るか、根気よく探すか、根気よく継続することをおすすめします。

デイサービスで、いろいろな人に接し、普段と違った環境で過ごすことは充分脳の刺激になります。

「自分の行く所じゃ無い」という人も、継続さえできれば馴染んで行く可能性が広がるのがデイサービスです。