高齢もしくは認知症になると、お風呂で便が出てしまうことも珍しくありません。筋肉が緩んで我慢がしにくくなったり、出る感覚がわからなくなっていたりと、本人ではどうにもできない状態です。今回は、お風呂で便が出てしまった時の対処のお話しです。
どの時点で、どの場所で便が出たかによって対処は多少違って来ますが、基本は同じです。本人への配慮のある『声かけ』をしながら速やかに行動していきます。
お風呂はトイレでは無いとわかっていても、間に合わないという場合も含めて、便が出てしまうことがあります。一度そういうことが起きると、今後も起きやすいことが想定されますので、『対策』をしておくことで、介助疲弊を軽くしていきましょう。
入浴介助で揃えておきたいアイテム5選
1.プラスチック手袋(スペアをポケットに用意しておくとより便利)
2.どんどん使い捨てられるぼろ布
3.汚れ物を入れる袋
4.除菌洗剤
5.お風呂サンダル
1.プラスチック手袋
ばい菌が手に付かないように、使い捨てのプラスチック手袋は必須です。対処している時に便で汚れることはよくあるので、スペアをポケットに入れておくと、汚れたまま使い続けたり、置いてあるところまで取りに行く手間が省けます。ホームセンターやドラッグストアで100枚入りなど箱で売られています。
2.どんどん使い捨てられるぼろ布
便で汚れたお尻をきれいにする時、便が付着した物を拭く時に使います。便によっては、なかなかすぐに拭きとれない場合もあるので、量産しておくと気兼ね無く使い捨てていけるので便利です。古いタオル、着なくなった服など、そのまま捨ててしまわずに、使いやすい大きさに切っておいてストックしておきましょう。15cm角くらいが使い勝手が良いですが、さらに大きめだと汚れたら折ってきれいなところを表に出して使えるので、お好みで。
3.除菌洗剤
例えば、サニーパスターは、フロア、トイレ、浴槽など、幅広く使える洗浄・除菌剤として、福祉施設などでよく使われています。介助者自身が使い勝手の良いものを選んで、衛生を保ちましょう。
5.お風呂サンダル
便が床に落ちたり流れたりと、ばい菌から素足を守るためにお風呂用のサンダルを履いておきましょう。お風呂ブーツは、一人で浴槽を掃除するだけならよいですが、人の介助では、ブーツの中にお湯が入りやすく、気持ち悪いので、濡れても汚れを踏まずに洗い流せるサンダルタイプがおススメです。
「あ〜またか」よりも「あーハイハイ」
便失禁がわかった時点で、「えーーっ!」という驚きや、「あ〜またか」という落胆の気持ちが生まれてしまいがちですが、目の前で起こった便失禁という事実は変わりません。そこで、その衝撃な気持ちを引きずらないことが大事です。
介助者は、本人の気持ちを配慮した声かけの前に、まず自分の気持ちをいったん切り替えることをおススメします。負の気持ちのまま介助することは、介助者自身のためにも、本人のためにも悪循環にしかならないと考えます。
やることが同じであるのなら、気持ちを切り替えた方が、お互いラクということです。感情が入り、相手を許せなかったりすると、気持ちは疲弊していくばかりです。
テーブルが汚れていた、ゴミがリビングの床に落ちていた、その時にあなたならどうしますか?
「誰が汚したの!!」「リビングはゴミ箱じゃないでしょ!」と目くじらを立てて怒りたくなりますよね。子どもの躾ならまだしも、結局自分がするしかない状況です。怒る感情は置いといて、とっとと自分で拭いたり、捨てた方が、結果的には早くきれいになります。
便失禁がわかったら、「あーハイハイ、こっち来て、今から着替えしますよ~」と自動的な流れで対処する方が、ずいぶん気持ちがラクなのです。
腹を立てて割りに合わないのは介助者に他ありません。高齢者で認知症で、本人にはどうすることもできない状況です。どんなに怒っても解決が難しいものが多いのです。
できてたことができなくなるのが、高齢者、認知症です。できてた過去は過去です。「今」の本人を見ることが大事です。いずれ自分も通る道になるやもしれません。
対処と声かけ
脱衣前に既に出てる
洗い場の床は便失禁の時点で掃除確定ですが、脱衣場の床は、パンツを外した時点で便がこぼれたり、パンツの汚れが再付着したり、二次災害の恐れが高いため、状況に応じて浴室内で外します。
立ってられたら立っていてね
しばらく立っていられる人なら、協力してもらい、手すりをしっかり握ってもらっていることを確認してから、先にお尻をきれいにします。
立っていることが難しい人は、手すりにつかまってもらい、介助者は身体を支えながら、休憩を挟みながら洗います。無理は禁物。
声かけ
「先にお尻をきれいにしますので、このまましっかり手すりを持って立っててください」「しんどくないですか?しんどくなったらすぐ座ってもらえるので教えてください」
「寒くないですか?」
「足元が汚れていますので、そのまま動かずじっとしててくださいね」
対処
・ぼろ布で大きな汚れを拭き取り、シャワーや石鹸も使いながら汚れを落としていく
・汚れたぼろ布や手袋は、どんどんゴミ袋に捨てていく
・洗っている最中に更に出て来たら、便が出きるまで、ぼろ布や袋を駆使して受けていく
・床に落ちた便は踏まないように合い間で拾っておく(細かい便は流して後で排水口掃除)
・常に声かけ。しんどくないか、寒さを感じているようなら肩にバスタオルなどをかける
・立ったままで負担が感じられたら、汚れていても一旦座って休んでもらう
・声かけしながら迅速に進めていく
介助者が一人の限界
介助者が一人の場合は、転倒など危険リスクが高くなるので、デイなど、施設でのお風呂利用を検討することをオススメします。
複数の介護士がサポートできる施設だと、より安全にお風呂に入ることが出来ます