若い頃にはトイレを問題無く使えていても、高齢になるにつれ、間に合わなくなったり、スムーズにトイレを使えなくなっていくことは、ある意味仕方のないことかもしれません。
そして、認知症になると、トイレの場所がわからないなど、さらに色々な問題が起きやすくなります。今回は、認知症高齢者のトイレ事情のお話しを2回に渡ってお伝えします。
知られざる他人のトイレ
トイレというのは、密室、個室、通常は他人に見られることも、見ることも無いものです。(オープンな人も居るかと思いますが)
デイサービスでは、介助度合いで、トイレの中での見守りや介助を必要とする場合に立ち合います。
そういう立場であるからこそ、何が起こっているのか、危険性、衛生面をお伝えしていきたいと思います。
認知症介護を日々頑張っているご家族にとっては、我が家だけ?と思っているようなことも、よそも同じなんだと安心できるものもあれば、よそで起こる危険性は他人事ではないことも知ることができるので、ぜひ参考にしていただければと思います。
座ってせずに立ってする男性あるある
男性は立ってする習慣があるため、座ってしない人は多です。高齢になるとその習慣が危険に繋がるので要注意です。しっかり両脚で踏ん張れる人はまだしも、ふらつきがある人は、狭いトイレ内でも転倒の危険性が高いことを見過ごさないようにしましょう。
また、高齢になると勢いがなくなるため、前より真下に尿がこぼれていき、床が汚れ、衣類が濡れてしまいます。自分で前のめり姿勢でする人もいますが、結果的には便器のふち、床、衣類を汚してしまっています。何よりその体勢もまた両脚でより上半身を支えないといけないため危ないです。
デイでは「便座に座ると楽ですよ」「暖かい便座ですので座ってどうぞ」「男性でも今は座ってする人多いですよ」などの声かけをすることで、現時点では全く聞かない人でも、自分でしんどさを感じてきた時に試して「ラク」だとわかると継続しやすくなります。
便座の前の方に座りすぎる
便座の前の方に座る人がいます。気づいて座り直してくれる場合は良いのですが、そのまま排尿をすると便座と便器の隙間から尿が流れ出て床にまでしたたり落ちる可能性が出てきます。
座る直前に軌道修正するか、座直すしか無いので、前の方に座るクセがある人は、「もう少し後ろに座ってください」「もっとお尻を深く座ってください」など声かけして自力で座ってもらうか、他力で動かして未然に尿がこぼれるのを防ぎましょう。
パンツをおろす力が弱すぎておろせていない
パンツや衣類をおろしきれずに座ってしまう人も多いです。そのままするとせっかくおろしたつもりでも濡れてしまいますし、濡れていることに気づかずにまた履いてしまうことになりかねません。
力が弱くなった高齢者は、自力でしっかり衣類をおろせるかの確認が必要です。もし、しっかり力が弱くておろしきることができない場合はできない部分だけを介助しましょう。
尿とりパッドを便器内に流してしまう
尿とりパッドをしている人は要注意です。認知症になると自分でしていることも理解できなく、無意識にいろんな行動をしてしまいます。
トイレットペーパーを流す要領で、尿とりパッドを自分で外して流してしまうのです。その場合、トイレの配管内で詰まり、大ごとになってしまいます。
尿とりパッドは流してはいけないと理解していない場合は、介助者が一緒に入りパッド交換などする必要があります。
・理解できない・・・介助と見守り
・理解できる・・・パッドの汚れ確認。汚れてなければ離れる
・理解が微妙・・・見守り
家のトイレは一般的には狭いので、見守るために一緒に入ることができません。ドアを開けた状態で、シャワーカーテンのような布を下げておくと、隙間や少しめくるだけで状況が確認できるかと思います。
拭くのは前から?後ろから?転倒の危険性が高いのは?
排尿の場合「前から拭く派」が多く、たまに「後ろから拭く派」がいます。
排便の場合「後ろから拭く派」が多く、たまに「前から拭く派」がいます。そして、手の届き具合で変える人もいるという、実に様々な拭き拭き事情がトイレ内で展開されています。
若い時からの習慣であったり、体の硬さによる手の届く位置が関係しているのでしょう。
危険が生じるのは、前から腰を浮かせて拭く人の場合、そのまま前へ転倒するおそれがあります。これは見ていてハラハラします。
本人の拭き方の習慣と、その時の状態で、前のめりに転倒する可能性がある人は見守りが必要です。
高齢者のトイレには、危険がいっぱいです。大丈夫と思っていても、両脚で踏ん張る力も、衣類の上げ下ろしの力も低下していく人は多いです。バランスを崩して転倒しないためにも、本人が出来ないところだけをサポートする体制でいましょう。
次回に続きます。
