デイサービスでは入浴があります。利用者が入れ替わっても、一定数の人は、着替えが不足している問題を抱えていることをご存知でしょうか。
必要な着替えを買えない理由とは
高齢になると買い物ひとつするにも身体的にも物理的にも大変さが増えてくるもの。必要な物を買いに行けない、必要な物が必要と思わなくなる、必要な物がわからないといったことが起こります。
体が不自由になり、あちこちが痛いと外出自体が億劫になっていき、車や自転車で移動していた頃と比べて、遠くへは行きにくくなり、買い物は持って歩けるほどしか買えません。
認知症の人ともなると、一人では買い物ができない人は多くなっていきます。
使える物はとことん使う
高齢になると、そもそも今在るもので暮らすことが当たり前になっていて、新しい物を買うよりもお金を残しておこうとする人が少なくありません。
物が溢れた現代に、古い物を大切に使い、壊れても修理したり繕ったりして長く使うことは、物の命を全うさせる良いことなのですが、美談に終わらないことがたくさんあります。
それ限界超えですよ
物を大切にしていることは素晴らしいのですが、買い替えの機会を失って、物が限界を超えているとなればまた別の問題です。
・肌着の生地が薄くなり、破れて擦り切れて伸びてボロボロ
・パンツはウエストも股ぐりもゴムが伸び切って、股ぐりから中が見えてる
・パンストは破れて伝線しまくり慎重に履かないと引っかかる
・靴下は穴が空いたままだったり、片方が伸びて左右でサイズが違っていたり、左右揃ったものが無かったり。
・高齢で太ったにもかかわらず、キツいまま着用している
・ボタンやフォックが取れたまま着ている
このような事態は、物を大切にしているというよりは、買い替えができない結果で、物の命を全うする心豊かな生活とはかけ離れた状態です。
健康に差し支えることも・・・
冬なのに長袖の肌着が無い人がいます。タンクトップや半袖の薄い擦り切れた生地の肌着で重ね着をしてしのいでいます。
パンツの生地が薄くなって伸び切ったものを履き、それを補うように、シャツと同様に重ね履きをしている人は何人もいます。
季節に合った衣類が無いと風邪を引いたり、夏は熱中症になったり、体調を崩す原因になりかねません。
また、歳をとり、若い頃着ていた衣類がキツくなっているにも関わらず無理矢理着ている人も多くいます。
動かない生活で足がむくんで靴下も靴もキューキューでキツい人も結構います。
血流が悪くなると、これもまたいろいろな病気を引き起こしてしまうおそれがあります。
お金があっても無くても買わない
いつまで生きるかわからない、今さら新しい衣類や物はもったいないということで、お金の有無にかかわらず、限界超えの衣類でも買い替える選択肢を持たない人は多いです。
圧倒的に独居の人に多い着替え難民
独居となると、生活の不安を一人で抱えている人が多く、家族が世帯別に居てたとしても、実状を把握している家族は意外に少ないです。本人も着替えについて頼みづらかったり、特に困ったと思っていないことで、手持ちの衣類が消耗していく一方になっています。
同居でも家族が関わらないと同じ
同居で着替え難民の人は、家族に「迷惑をかけたくない」と頼みづらさを抱えている人は多いです。家族が必要以上に関わらないケース、着替えのことまで気が回らないケースがあり、着替え難民になっている可能性があります。
新しい着替えを自分の物と理解できない
認知症高齢者は、自分の衣類でさえ、「これは私の物じゃない。誰かが勝手に置いて行った」などと混乱する人がいます。
家族が新しい着替えを用意したとしても、人によっては、受け入れられない人がいるので、そのような時には根気よく対処していくことが求められます。
家族としてできること
家族が繕う
自分のと理解している物を繕って、長く着続けられるようにすると、本人にとって一番気持ちが安定するのでしょうが、繕うことで本人の意図せぬリメイクがされていたら混乱してしまう可能性もあるのでそこは注意です。
使ってもらえる工夫をしてプレゼントする
新しく買った物を贈り物としてプレゼントする。手渡しして贈ると、コミュニケーションも取れて一石二鳥です。高齢者あるあるですが、贈った物を大切にしまい込んでしまいがちなので、使ってもらえるように、本人と話しながら記名したり、古い物と交換したり、一工夫が要るでしょう。
デイサービスの職員は、着替え難民を日常的に目の当たりにしていますが、現実的には届かない領域なので、もどかしいところです。
