認知症高齢者と一括りに言っても、同じ要介護度でも実に見え方は様々です。
デイサービスでそんな様々な認知症高齢者と接していると、デイサービス内でどんな人が不利になっているのかが垣間見えます。今回は同じ認知症高齢者でも不利になりやすい人のお話しです。
不利になるトップ3
トップ1 耳が遠い
耳が遠いと他者とのコミュニケーションが取りにくく、トラブルに発展しやすい。
例1
耳が遠いAさんに、耳が聞こえるBさんが話しかけています。Bさんの会話の内容は認知症ゆえに意味がわかりにくいです。Aさんが「え?なんて?」と何度か聞き返したことでBさんは不機嫌になっていきます。
Aさんは「耳が聞こえにくいから何か言ってるのはわかるけど何を言ってるのかがわからへん」と正直に伝えていますが、Bさんは理解力が低下しているためその言葉の意味がわかっていない様子。
Bさんは周りの人を味方につけるべく「なんで聞こえへんのやろねえ」とAさんを無自覚に仲間外れの標的にしようとします。周りの人は、これまた認知症がゆえに、二人のやりとりの理解はできずニコニコ笑ってBさんだけが不満そうです。
結果、職員が間に入り、AさんにもBさんにも言葉を選んで伝え、トラブルに発展しないようにしていますが、Bさんはすぐ忘れてまた同じように話しかけて繰り返しています。
例2
耳が遠いCさんは、周りの人たちが会話している様子が気になって仕方ありません。たまたま目が合ったりすると、自分の方を見てヒソヒソ悪口を話している!!何か文句あるのか!!と怒り出します。
周りの人たちはビックリするのですが、人によっては「なんやと!!やるか?!」と売り言葉に買い言葉となってケンカになります。
Cさんは耳が遠いので他の人と会話が難しく、被害妄想になりやすいため、職員が話しかけたり、被害妄想が出ると誤解を解いたりしています。
例3
耳が遠いDさんは、耳が遠い上に性格的に人の話は聞かないタイプ。とにかく自分の言いたいことを話し、相手に声を張らせてでも聞きたいことだけは何としてでも聞くため、相手に不快な印象を与えがちです。
職員が間に入りますが、職員もまた説明が通じないため疲弊していきます。
トップ2 目が見えにくい
目が見えにくいのもまた他の人と目を合わせて会話できないため、なかなか誰かとコミュニケーションができません。
例1
耳が聞こえ、会話のコミュニケーションができるEさん。目が見えにくいだけで、誰かと関わって会話を楽しんだり、一緒にゲームなどすることができません。
たまたま隣り合わせた人と、ごくたまに話すことができたとしても、会話として続くことは無く、いつもテレビを見ることも無く、席でじっとしているか、ベッドで寝ているか座っているかです。
気にしない人も中には居るので、タイミングさえ合えば楽しそうに会話されてますが、話し相手が限定される上、それぞれに別のことをしてタイミングが図れないことの方が多く、職員が声かけをしながら、少しでも会話する機会を持ってもらっています。
トップ3 話せない
認知症が進み、言葉がうまく出なくなってしまうと、他の利用者からは小さい子供扱いされたり、居ない者扱いされたり、からかう標的にされたりすることがあります。
例1
「お母さん何歳?」
「・・・」
「お母さん何歳って聞いてんねん!」
「・・・」
「何も答えへんわ」
社交的に話しかけてくれる人でも、認知症のため相手の状態を理解することはできず、返答が返って来ないことに見る目が厳しくなっていきます。
例2
「△〇◇□#$%&」
「何?」
「*$&W#!%#Q」
「何言ってるの?」
認知症が進行して言葉を殆ど発しない、逆に誰かれともなく話しかける人が居ます。言語能力が崩壊して何を言っているのかわかりません。話しかけられた人もまた認知症のため、相手の状態がわからず、人によって困る、無視する、職員に助けを求める、怒り出すなど反応はどれも冷たいものです。
話せない人は特に職員が間に入って調整しないと、優劣世界が生まれてしまいます。
救いはその人の生き様
耳が聞こえにくい、目が見えにくい、話せない、いずれもそうなってしまったら、どうすることもできません。
そうなった時にまだ救いがあるとすれば、認知症になる前の生き様です。その人が長年培ってきた人柄が我が身を助けることにつながります。
認知症は、その人がその人らしさを失ってしまうように見える部分もありますが、その人の性格が煮詰まった状態になったり、我慢してきた自制が外れてしまったり、その人の生きて来た様が出てくるようになります。
その人柄次第で、介護者の心持ちも人間ですので変わります。要介護度が上がり、どんなに大変な状態に陥ってたとしても、介護者に対して悪態つく人ではプラスαの気持ちが持てません。
気持ちの伴った感謝をする人、笑顔がすてきな人は周りから助けてもらいやすいです。
人生の終盤を迎えた認知症高齢者の人々と接していると、自分の生き様を今からでもどうにかしなくちゃという気にさせられます。
