認知症かいごブログ

死んだ方がマシと言う認知症高齢者が増えてる?!

「死んだ方がマシ」「早く死にたい」「早くあの世からお迎えに来てほしい」

気づいたら、最近デイサービスでよく聞くようになりました。今回は深刻とは反対のお話しです。

「死にたい」という言葉を発する背景は人それぞれ違います。深刻に悩む人がいる反面、簡単に口にする人もいます。本人しかわからないことですが、デイサービスに来ている人の数人が何かの折に口にしています。

家族と折り合いが悪いAさん

Aさんは奥さんとの仲が悪く、家では最小限しか介護されず、いつも「早く死んでくれ」「じゃあ殺してくれ」という掛け合いが毎日繰り返されている様子。近くに住む子がいますが、子もまた最小限しか関わらないようです。

確かにそんな環境ではツラくなるのも無理がありません。認知症専門デイサービスに来た当初は穏やかな雰囲気で、誰かと話すことは好きだけど、耳が遠いことと、周りは認知症の人のため余計に会話を楽しめる相手はおらず、家でも外でも孤独感があったと思いますが、それを顔に出す、口に出すということは無い人でした。

足が不自由で、手押しを使用していても歩行は、かなり不安定。「こうなったらおしまいですな」と自虐的な言葉を笑顔で話しています。

ところが、途中から「死んだ方がマシや」という言葉が出てきて、それがほぼ毎回になっています。

Aさんの背景での変化は、家族に変わりは無いですが、デイサービス内で仲が良くなって会話できる友達ができたことが大きな変化でした。デイサービスにも慣れて、レクリエーションなども、とても楽しんで参加するようになりました。

それがなぜ「死んだ方がマシ」に繋がるのだろうと考えたところ、気持ちを素直に出すことができるようになったのではという結論にたどり着きました。

「死んだ方がマシ」と言うAさんに対して職員は「そんな悲しいことは言わないで」「Aさん居なかったら寂しいですやん」「他の人もみんな同じこと言ってますね、まだちょっと早いですよ」「なんでやね~ん」など色々な返しをします。

Aさんにとって、自分の存在意義を確認する言葉なのかもしれないと思うようになってから様子を見ていると、やはり言葉に冗談が混じるようにもなり、デイサービスでリラックスして過ごせるようになっているように見えます。

ボケてきた自覚で不安になるBさん

しっかり覚えていたり、物事を理解したりできていたことが、自分でもわかるくらいに色々なことがわからなくなってきた不安に駆られているBさん。

Bさんが「ボケてきてる」「もう早く死にたいわ」という言葉が出るのは主に大事な物が無くなって思い出せない時です。単なる物忘れでは無いことも自覚しています。

しっかりしている人ほど落胆する気持ちは大きいのでしょう。落ち込む自分に何とか納得させる、諦めさせる、そんなことが続きます。

Bさんはケアハウスで一人暮らしです。同じケアハウスに住む人同士の交流は殆どありません。あいさつ程度の会話があるか無いかくらいです。

デイサービスに来た当初は無表情でとっつきにくい雰囲気でした。ところがしばらくしてデイサービスに慣れてきてからというもの、自覚して言ってたほどの無表情が、今本人が気づいているかわかりませんが、とても笑顔が増えてます。

耳が遠くて、他の人と距離をとっていたのに、自分から話しかけていくようにもなりました。手仕事をお願いすると爆速でこなしてくれます。

Bさんがこの先、今よりも忘れてしまうことが多くなったとしても、その分、デイサービスで他の人と関わったり、楽しく過ごせる時間が増えていくことで、孤独や不安が楽しさで上書きされることを願います。

他にもデイサービスに来て「死にたい」と口にする人は、AさんやBさんのように集える仲間や会話できる人がいて、気持ちを受け止めてくれる人がいるからこそ、嘆きや悲観した言葉を安心して口に出しているように見えます。

そう見えるからこそ、裏の裏、奥の奥まで、その人その人が抱えているであろう悩みを常に意識しながら、今できる声かけ、今できるパフォーマンスができたらと思います。